RISEの活動

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理事会便り(2012年5月)

(2012年5月2日)

大型連休の谷間はあいにくの大雨になりました。今日は宇田川さんは仕事の都合で参加できないため、小西さんとふたりで、私たちの現在の状況と、私たちの活動の出発点になった日本の女性の問題を話し合いました。

何度も申しますが、私たちは日本社会で「個を尊重し、創造性あふれる社会を作る」ため、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する基礎は、「健全なセルフ・エスティームをもち、自分の人生を自分で選択し作り上げていく主体性を持った人間」だと考えています。 しかし、「では日本人に(とくに子供や若者に)、どのように健全なセルフ・エスティームを育むか」を考えていくと、この問題の難しさに直面しています。私たちができることはなにか、セルフ・エスティームの重要性をいかに社会に伝えていけるのか、壁にぶつかっているのです。 そこで、まず原点に戻ってみることにしました。

私たちとセルフ・エスティームの出会いは2003年に二人で受講したジャック・キャンフィールドのワークショップでした。そのころ、小西さんと私がほかの友人たちと「より多くの日本の女性たちが企業で意思決定のできるポジションにつくことを応援する」目的でNPO GEWELを設立したばかりでした。2003年にGEWELが行った調査で、20代30代の働く女性たちのうちで「管理職志向」を持つ人が25%に満たないことを知り、その理由を考えているときに、このワークショップに刺激をうけ、女性たちが健全なセルフ・エスティームを持つことで、自分の人生を自分の選択で作り上げていけるのではないかと考えました。そこでセルフ・エスティームの要素を取り入れた「自分ブランドづくり」などのワークショップを開発し、いくつかの企業で実施し好評をいただきました。

しかし、大半の企業では「女性の働きやすい職場を作る」ための制度の充実に力を入れ、セルフ・エスティームの醸成など意識の面はなおざりにされています。大企業での育児休暇取得率は高まっていますが、日本企業での女性管理職比率はまだまだ低く、日本企業のジェンダー・ダイバーシティはまだまだ発展途上です。企業の担当者は、課題の原因を「女性の意識の問題」「中間管理職の男性の意識の問題」と言われますが、その意識の問題にセルフ・エスティームの研究がかかわるのではないかと私は思っています。

なぜ日本企業で女性の活躍推進がすすまないのか?一つには企業の経営者が、ダイバーシティの推進を経営戦略の一環として考えていないことで、企業の本気度がイマイチということですが、一方、日本の伝統的な男女役割分担論がいまだに根強いことが考えられます。「女の子はここまで」という教育や社会慣習が根強く、それが女性たちの仕事の場面でのセルフエスティームの醸成を妨げているのでしょうか?

小西さんと私は自分たちのテーマの一つとして、この問題をセルフ・エスティームとの関連において考えてみたいと思っています。小西さんの卒業論文によれば、セルフエスティームと自己効力感になにかヒントがありそうですが、さらに議論と調査が必要だと思います。


(2012年5月16日)

今日は米国から、次世代リーダーを育成するためのNPO法人GOLD (Global Organization for Leadership and Diversity)の最高責任者であり、我々が以前理事として活動をしていたNPO法人GEWELのアドバイザーでもある、建部さんをお迎えして理事会を開催しました。建部さんは、個人の才能を尊重し活用する企業と市民のコミュニティーの創造を目指し、働く女性の支援活動を日米で展開しています。建部さんにはRISE設立に際し、お祝いメッセージを頂きました。

今日の主な議題は、“セルフ・エスティーム研究とダイバーシティの関連性”でした。今までの研究、特に、昨年末に実施したビジネスパーソンの意識調査(ベンチマーク・サーベイ)に組込んだ22項目の自尊感情測定尺度の結果から、セルフ・エスティームの属性間における違い(高低)は見えてきたのですが、セルフ・エスティームの高さがどう云った要因により変動するのか、或いは、どういった状況でセルフ・エスティームを高く持つ意識が生まれるのかなど、様々な領域にもう少し具体的に踏み込む必要性を感じています。要するに、セルフ・エスティームのVariationを探っていく事で、我々が掲げている“ダイバーシティ&インクルージョンの心理的背景を支えるセルフ・エスティーム”の理論的解明に一歩近づくであろうとの結論から、次なる目標が見えてきました。

また、前回の理事会でも討議されたセルフ・エスティームと自己効力感は、“心理(Mind-set)と実際の行動(Action)”において深く関係性があるとの議論がでました。具体的には、個人がそれぞれ持っているセルフ・エスティームに自己効力感が作用する事で行動に変化が生じる。例えば、「健全なセルフ・エスティームを持った人に自己効力感が高く作用する事で、前向きな行動や言動が生まれてくる」と云った事です。そして、この“自己効力感”が今後の研究素材として大きな意味を持ち、日本人の文化的背景(思考や行動態度)や幼少期の教育(学習経験、特に母親との関連)にまで領域を広げる必要性があると考えています。この研究テーマのキーワードは“Unconscious Bias(無意識の先入観)とStereotype(固定観念)”になるかと思われます。これらの研究は、順次進めていきます。

最後に、2009年と同様に先日のベンチマーク・サーベイの米国版を早急に実施し、結果の日米比較を基に、“セルフ・エスティームと文化背景の関係論“への展開を研究活動の一つとして掲げる予定です。