RISEの活動

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理事会便り(2012年9月)

今月の理事会は、12日水曜日、例年にない酷暑をものともせず開催しました。

まず宇田川理事からアメリカでの調査の分析状況がレポートされました。アメリカでの調査結果は、2010年の調査とほぼ同様の結果ですが、アメリカでのながびく景気低迷の影響をうけてか、「働くモチベーション」の多くの項目で数値が有意に低下しているとのことです。これからは日米比較と、なぜ日米に差があるのかというポイントで分析を続けることで合意しました。また調査結果の読み取りに関しては、多くの方の意見を聞きたいので、年内に勉強会を開催することも話し合いました。調査結果の分析は10月中にRISEのホームページに掲載します。 ご期待ください。

次に、8月19日から27日まで堀井が中国、新疆ウイグル地区に行った旅の報告に移りました。堀井個人としては、2006年からはじめたシルクロード玄奘三蔵の足跡をたどる旅の仕上げであり、中国国内踏破を達成したことが思い出に残る旅でしたが、中国滞在中にテレビで日韓、日露、日中の領土問題が連日報道されていたことも、初めての経験として印象的でした。いままで海外旅行中に日本の問題が連日報道されるのを経験したのは、2009年ウズベキスタンに旅行中に日本の総選挙の結果が報道されたことだけでした。その時も一日か二日の報道で終わりましたが、今回は滞在中連日「リーベン(日本)」という言葉がテレビから流れ、その都度、一生懸命中国語のテロップに目をこらしたものです。やっと北京で英語放送を見たときにやっていた特集番組も「日露の北方領土問題」でした。

この原稿を書いている9月17日にも中国で大規模なデモが発生し、中国政府の対応が懸念されています。RISEの理事会でも、いままで日本人が国境とか、領土の問題にあまりにもナイーブ(無知であり、無策であるという意味で)であり、領土という国家の権益の問題をあいまいにしてきた長年のつけが、日本の経済力が低下し、国際的に重要度が低下した今、一挙に露呈したという事ではないかなど話し合いました。

そこで話題になったのは、「潜在的自尊感情」と「顕在的自尊感情」の問題です。私たちの調査はローゼンバーグの理論に基づく「顕在的自尊感情」についてですが、2007年に発表された論文では、「Apparent Universality of Positive Implicit Self-Esteem」とあり、顕在的自尊感情が高めにあらわれるアメリカ人と、低めにあらわれる東アジア人(中国・韓国・日本)の間で潜在的セルフ・エスティームはあまり変わらないという研究結果が出ています。この論文の抜粋を読んでみましたが、方法論など理解できないことも多く、もう少し研究したいと思っています。私たちの調査でも日米のセルフ・エスティームの評価は大きく違います。これが、顕在だけの差なのか、潜在もふくめて日本人はひくいのか、また、もし日本人の顕在的自尊感情と潜在的自尊感情の評価が異なる場合、「本当は自信があるのに、周囲に対する配慮から、自己の能力を低く評価する、もしくは低いと謙遜してみせる」ことが、日本人の行動や、国際社会における自己主張能力にいかに関連するのか、現在の国際関係の問題とも関連して、本当に興味あるテーマです。

日本の政治家や外交官が突然「顕在的自尊感情」が高くなるとは考えられませんから、せめて「潜在的自尊感情」をたかめ、交渉力を発揮して「大人の解決」に持ち込んでくれと願うばかりです。