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RISEベンチマークサーベイ2014(ビジネスパーソンの働く意識調査:管理職志向とセルフ・エスティーム)

“RISEベンチマークサーベイ(ビジネスパーソンの働く意識調査)”は、前回2011年末にも実施しました。翌年の2012年秋には政権が変わり、アベノミクス(円安など)の効果か景気も若干持ち直し感がありました。また、安倍首相の成長戦略の一環として「女性の活躍推進」も提唱され、官公庁の要職にも女性の次官や局長が就任し、大企業でも女性執行役員の登用が活発になってきています。ダイバーシティ関連、とくにジェンダー・ダイバーシティの視点から社会環境が大きく変化している中、ビジネスパーソンの意識がどう変化しているのか、また女性たちのキャリアに対する意識はどう変化しているのか、今回の調査結果を大変興味深く分析しました。結果は、われわれの予測に反して以前より内向き、そして、やや元気に欠けるビジネスパーソン像でした。安倍内閣の施策が、ビジネスパーソンを前向きにしているとは未だ言い難いようです。
今回の調査では目的の一つに“女性ビジネスパーソンの管理職志向の現状把握”を加えたことで、調査対象者条件も従業員数100名以上の企業・官庁・NGO/NPOに週4日以上/30時間以上働いている人々に変更しました。また、“管理職志向の有無”を含め、“結婚後の継続就労意識“など、質問票に多くの新規質問をくわえました。そして、今までに使用してきた調査パネルを変更したこともあり、厳密に云って、今回の調査は過去2回(2009年&2011年)の調査結果と直接的な時系列比較はできないと考えています。但し、全体的に数値はやや低めながら、過去2回の調査でも使用した各質問に対する回答傾向(※)は同じでした。
※ 回答傾向:過去と比較して、絶対値レベルでは数値の大きさに違いが見られるが、選択肢の選択順序が同一など、態度や意識の基本パターンに変化は見られない。

今回の調査の主な探索領域は以下の通りです。

【主な探索領域】

今回の調査では、働く態度と意識の領域に“職務記述書の有無”を追加しました。昨年行った、定性調査(女性社員の管理職志向)でも確認したのですが、「人は自分が職場で求められていることを明確に意識(目標が持てる)して働くことで仕事における自己評価も明確にできるし、さらに高いレベルの仕事がしたいというチャレンジ精神もうまれるのではないか」、また、特に女性たちは、「自分に対する会社や上司の期待があいまいなまま日々の仕事に追われ、目標が不明瞭なために仕事の達成感を味わうことができていないのではないか」、これらの仮説に基づき、職務記述書の存在がどの程度意識されているのか、または認知されているのかを探る目的でしたが、非常に面白い結果でした。詳しい調査結果に関しては、添付調査レポートの「調査結果の要約」をご覧ください。

【働く態度と意識】

働く目的の主要なものは経済的な理由であり、また、大企業勤務者には安定志向がみられます。愛着心(愛着心を感じる:46%)もやや低めで、仕事に対する満足度(仕事の内容:44%)もやや低く、全体にやや覇気のないビジネスパーソン像が浮かびます。
注目の職務記述書ですが、職務記述書の存在認識は管理職と一般職で大きくちがい、一般職女性では72%が「職務記述書はない/あるかどうかわからない」と回答し、管理職でも49%が「職務記述書はない/あるかどうかわからない」と回答するなど、特に日本企業での職務記述書の認知度は低いです(認知している率 ⇒ 日本企業:35% vs. 外資系企業:49%)。

【管理職志向】

一般社員の管理職志向は予想通り低く、特に女性の非管理職志向は60%近くに及びます。これだけ世間で「女性活躍推進、2020年までに女性の管理職を30%に」といわれていても大半の一般職女性はわが事とは思っていない様です。あいかわらず女性にとって管理職は魅力がないのでしょうか?!

【ロールモデル】

ビジネスパーソンにとってロールモデルの存在は重要だと言われますが、実際には、“ロールモデルとして意識している人がいる”と答えるビジネスパーソンは14%しかいませんでした。女性活躍推進の施策の一つとしてメンタリング・プログラムを実施している企業は多いと思いますが、メンターとロールモデルは必ずしも一致しないのでしょうか?職場に「ああいう人になりたい」とうロールモデル的な人がいることも目標意識を明確にする有効な方法だと思うのですが、、、

【ダイバーシティ】

昨今の報道やビジネス雑誌の記事の取り上げ方などにより、“ダイバーシティ”という言葉の認知は確実に向上し、今年は認知度が20%を超えました。過去は男女間で相当な開きがありましたが、今回の調査では女性(18%)の認知度も男性(23%)に近づいてきました。また、企業内でのダイバーシティ推進評価も概ね好意的で、特に女性から“職場復帰、社内制度の利用しやすさ”は高い評価を得ています。制度が整備され使い良い環境で女性の活躍推進を阻むものは何なのでしょう?一方、企業が依然として男性を優遇しているのは課題と思われます。基本的な働き方の問題でしょうか?管理職の女性の働き方に対する無意識の偏見でしょうか?

【セルフ・エスティーム】

前回と同様、本質的なセルフ・エスティームは男女間に差が見られず、日本的な文化が背景となっているのでしょうか、やや控えめな自己評価が特徴的です。また、仕事上のセルフ・エスティームでは依然として女性の自信度が低く、昨年実施した定性調査の結果を裏付けています。

【結婚・出産・子育て】

今回の調査でも非婚傾向が明らかになり、また20代女性が結婚や出産後の継続就労に対して不安を抱いている事がわかります。これだけ、社会や会社が変化を起こし彼女たちを支えようとしているのに、彼女たちの根深い不安はなぜなのでしょう?

また、今回は、“1.ロールモデルの有無”、“2.セルフ・エスティームの高低”、“3.管理職志向の有無”、そして、“4.職務記述書の有無”を軸にとり、調査結果全体に対しクロス分析を試みました。結果はご想像通り、上記4指標にポジティブ(職務記述書の場合は職務記述書があると答えた人)な人は全般的に物事を前向きにとらえるポジティブ人間であることがわかります。また、これら4指標はそれぞれが非常に高い正の相関を示しています。


これらの結果をもとに今回の調査結果を読み取ったRISE(ライズ)の提言です。

1.女性活躍推進の追い風の中でも、「その気にならない女性たち」対策

女性達は、これまでの両立支援施策や、制度作りにおいて企業が努力していることを認識し評価もしています。それでも、やはり、男性中心の職場慣行、長時間労働、家事・子育てなどにおける役割分担が変化しなければ、「長時間労働で、責任ばかり負わされる管理職」には魅力を感じません。

昨年実施した定性調査の結果報告でも提言したのですが、女性たちの“仕事上のセルフ・エスティームの低さ”が解決されない限り、女性たちがその気になるのは難しそうです。男女を問わず、企業・組織が一人一人に期待をかけ彼らが必要であることを意識させ、目標を明確にし、多様な能力を活かす育成指導を行うこと、すなわち、私たちの提唱する“インクルーシブな職場環境を実現”することが、回り道の様でも確実なステップだと思います。

また、女性管理職を輩出させるときには多数の女性管理職を一度に誕生させ、彼女たちが孤独でくじけることのないようなサポート体制をしっかり作ることも重要です。

2.職務記述書の重要性

これまでも各種調査結果を読むたびに興味が湧いていたので、今回、“職務記述書の有無“に関する質問をくわえました。結果は予想通りの認識の低さでした。会社や人事担当者が思っているほど、社員、特に一般社員は自分たちの職務・職責がなにで、どのような成果が期待されているのか十分に理解していない可能性が高いです。これでは、個々人が職場でのステップアップ目標を作れず、仕事をする上で達成感が感じられないまま日々を過ごすことになります。経営者や人事部門がより、モチベーションの高い社員を望むのであれば、ぜひ、業績目標の設定・評価のミーティングで職務記述書に基づいた話し合いが行われることを徹底してください。

3.ロールモデルの重要性

職務記述書が仕事上の役割と目標を明確にする手段であるとすれば、ロールモデルは自分のキャリアの目標を具現化する手段です。ひとりですべてのモデルになれる人はいないかもしれません。あの人のここ、この人のあんなところと複数の先輩や上司の部分ロールモデルもありです。また反面教師もありです。仕事の進め方、部下との接し方、ファッション、生き方、なんでもお手本にできる人がいると元気がでます。


経営者や人事部門の方へ:
メンタリング・プログラムの実施も、ロールモデルを発見する有効な手段かもしれません。ダイバーシティの推進で、マイノリティーの人材開発にメンタリングは不可欠の要素だといわれます。ご検討ください。

以上、“ビジネスパーソンの働く意識調査2014“の総評です。皆様の忌憚のないご意見、フィードバックをお待ちしております。