RISEからの提言:定性調査2013の結果を踏まえて!

(女性社員の管理職志向とセルフ・エスティーム)

1. 調査の目的

私たちは2003年にNPO法人GEWELを設立し、より多くの女性が企業や組織で意思決定できるポジションに就くように、当初、「女性活躍推進」の立場から個人向けの研修プログラムや企業へのコンサルティング/研修などを実施してきました。ところが、「女性」という命題を掲げると、男性は「これは自分たちの問題ではない」ということで当事者意識を持たないという事がわかり、2005年からは「日本社会や企業組織のダイバーシティ&インクルージョンの推進」へと目的をより拡大し、「個人個人の価値観や能力が活かされ、多様性を受け入れる組織風土の醸成」のための、コンサルティングや研修等の実施を行ってきました。

この10年間、IT技術の急激な進歩による世界経済の一体化、日本経済の将来性を懸念した日本企業の更なるグローバルマーケットへの進出などをうけ、日本社会における「ダイバーシティ&インクルージョン推進」は待ったなしの状態になってきています。また、一昨年の政権交代以降、安倍首相が女性活躍推進を成長戦略の重要課題と明確に位置付けたことで、日本社会における一番身近なダイバーシティの論点、“女性活躍推進”に対して官庁や経済団体も本気で取り組もうとする姿勢が出始めています。

この10年間、女性たちの管理職志向(特に20代後半から30代前半の管理職直前世代)は若干向上してきたとはいえ、RISEが2011年に実施した調査でも、“もっと上のポジションで仕事をしたい”と考えている女性は24.6%と男性の39.4%を大きく下回っていました。2013年には“新卒女性社員の管理職意欲が高まっている”というような報道もありましたが、現実に企業社会で働いている女性たちの管理職への挑戦意欲はRISEの2011年調査に見られたように依然として低いままなのではないかと思われます。“新卒女性の元気はいつまで続くのだろうか?”このまま政府や企業の意図と本人たちの意思のギャップが解消されない状況では日本社会における更なるダイバーシティ推進(特にジェンダーダイバーシティ推進)は新たな困難に直面するであろうと私たちは懸念しています。

今回の定性調査(デプス・インタビュー)では、働く女性たちの本音を深く聞くことから“女性の管理職志向を高めるには、企業はどのような努力をしなければならないのか?”を探ると共に、この調査結果を受けて“女性たちに考えてほしいこと!”をRISEからの提言として発信させて頂くことを目的としました。


2. 働く女性たちの本音とその意味すること

働く女性たちの人生設計では、“結婚して子どもを持つという女性としての役割”を担う事が強く意識されています。同時に、家計をささえるため、また社会との接点を維持するために“事情が許す限り働き続けたい”という継続就労意識も強くなっています。この現象は、M字型カーブの改善が見られるデータによっても裏付けられています(下図参照)。しかし、継続就労意欲の改善は必ずしも前向きな管理職志向と連動しているわけではありません。職場にいることで経済的なメリットを享受し、社会と接点を持てれば良いというのが率直な感想です。それでは、企業の期待する女性リーダーは生まれません。


女性の年齢階級別有業率-平成9年~24年

総務省統計局


女性たちが管理職を志向しない理由の一つとして、“管理職になると休日出勤や長時間労働が多くなりプライベートとの両立が困難になる”といった理解があります。職場では男女を問わず、職場の上司や管理職の人々の言動や職場での厳しい立場を見聞きすることで、マイナスのロールモデル効果が表れていると思われます。

また、日本企業の伝統的男女役割意識もまだまだ強く残っているようです。2013年に経済同友会が実施した調査に回答した企業は、女性管理職が増加しない理由を下記のように述べています。それぞれの論点について、今回の調査で明らかになった女性側からの視点やとらえ方を書き入れてみます。

課題:管理職志向の女性社員が少ない

・女性の中には専門性を高めることには前向きであっても、管理職を目指すことに消極的な社員も少なくない。一部の女性社員は女性の活躍推進に熱心であるが、関心が薄い社員も少なくない。
女性が専門性を高めることを目指すのは、職場や社会でそのように育てられているからです。男性のようなローテーションで様々な職務や職責が経験できる機会を女性に与えない企業がいまだに多い。“女性は専門性(職)だけに強みを発揮し、幅広いマネジメントは苦手”といった無意識の偏見はありませんか?

・女性社員は実務能力に優れている者が多いが、自ら率先して管理職を目指す人がそう多くないのが現状。
男女を問わず、管理職の厳しさを見聞きし、女性管理職に対する社内のネガティブな評価を聞けば管理職を目指す女性たちが多くならないのも当然。実務能力は日頃から繰り返される仕事で磨かれるが、管理職になるために必要な幅広い仕事を経験するチャンスを与えられていない。

・せっかく登用しても本人が力不足を理由に辞退することがある。力は十分にあるのにのびのび仕事に集中したい人が増えている。
管理職の職務記述書で、“何がこのポジションの仕事(職務)で、何が求められて(職責)いる”かが明確にされていれば、女性たちも職務や職責をこなす為に必要なスキルや能力向上に向けてチャレンジする領域が理解できる。したがって、職務記述書で仕事の内容を明確にすることで本人の不理解からくる「力不足」の念を払拭できるのでは? 従来の、“阿吽の呼吸”をベースとした職場の人間関係や指示的な仕事の与え方は、若い男性たちの理解をも超えるのではないだろうか?

・新卒採用で女性比率を増やすなど、女性社員の量的拡大は進んでいるものの、管理職に成りうる層の質的向上(育成/本人の自覚)はまだ十分とは言えず、今後の課題と認識。
・女性がマネジメントを魅力的なポジションと感じていないケースがある。
・女性社員自身が、将来マネジメントを担っていくという意識に欠けている。
育成はともかく、本人の自覚は周囲の本人への接し方(インクルージョン感性)で変わってくる。多くの職場で女性たちは期待されているとは受け取っていない。仕事の仲間 = 対等なパートナーとして、女性を認め登用する雰囲気が職場にあるか再確認することが肝要ではないでしょうか?

経済同友会のアンケートに答えた企業の回答者が女性たちの課題と考えていることは、実は日頃の企業風土に対する女性たちの素直な反応なのです。むしろ、女性が管理職として企業で活躍することのむずかしさを痛感しているからこそ、“このまま男性社会が続くであろうから、自分の夫には出世してほしい”というコメントも出てくるのです。

また、私たちは、高いセルフ・エスティームが管理職志向の有無とポジティブに相関していると考えてきました。今回の調査でも、たしかに基本的なセルフ・エスティームの高さは仕事への自信と結びついていることは分かりました。しかし、ポジティブなセルフ・エスティームは“仕事の成果を周囲が認めてくれることから生まれる仕事への自信”につながるとはいえ、やはり、職場自体の雰囲気、特に男性社会の色彩が強い職場においては、必ずしもポジティブなセルフ・エスティームだけで管理職志向を醸成できるものでは無いようです。


3. 調査結果を受けて、“女性管理職増加を促進する”ためのRISEからの提言

企業へ:

すでに経済同友会の調査回答企業がかかえる課題に対するコメントで述べたように、女性管理職を増加させるには、まず日本企業のこれまでの男性中心の価値観、働き方、役割分担意識などをドラスティックに変化させなければならないと考えます。今まで当たり前と思ってきたことを一つ一つ検証していくことで、女性に管理職への希望を失わさせる要素を確実に消去していくことです。
また、経営者が、ジェンダーダイバーシティをはじめとする“企業のダイバーシティ&インクルージョン推進”がグローバル化に対応するための不可欠かつ緊急の課題であると理解しているなら、思い切って、“ポジティブアクション = 一定数の女性管理職の一斉登用”を掲げてみる事も効果的かもしれません。この場合、当事者となる新女性管理職に対する風当たりは相当きついでしょうから、経営者と上位者が一丸となって彼女たちを守る必要があります。そのなかから、ポジティブなロールモデルを育成していくことで、若い女性たちの考えや思い込みを変えることが可能になると思います。

女性たちへ:

女性たちも、“ここで男性社会を認めて現状維持を選んだら日本は決して変われない”であろうと思ってください。人生は、結婚と出産・育児が全てではありません。あなた自身が、あなたとしてこの世に生まれてきたことの意味は、あなたがどのようなキャリアを作るかで決まります。キャリアというのは、“出世や経歴”ではなく、昔の馬車の轍(わだち)の事、即ち、“あなたが生きてきた道のり”の事です。どんな世界にどんな道を作るのかはあなた自身が選んで決めることです。せっかく、企業で働き続けることを選ぶなら、その企業の成功に貢献できるような働き方をしてみませんか?