セルフ・エスティームについて

セルフ・エスティームは、「自己評価をもとにした自尊心・自尊感情:自分を尊重する/大事にする」と定義され、高いパフォーマンスを達成するためにセルフ・エスティームを高める必要があると考えられています。セルフ・エスティームが高まるとは、自分の想う、或いは望む自分と現実の自分にギャップがなく、自分自身が自分のことをよく理解して、ありのままの自分を表現できる状態を云います。ここで云う『自分』がセルフコンセプト(自己概念)であり、理想の自分と現実の自分について考えるプロセスを経て認識されます。

高いセルフ・エスティームは個人と組織の生産性や人間関係の質を高めるために大きな役割を果たすとされ様々な分野で注目を浴びていますが、言葉の意味について誤解※されている事も多く、RISEでは今後の研究活動を通じて適切な理解と普及に努めます。セルフ・エスティームを高めるためにセルフコンセプトをしっかりと認識し、ありのままの自分を認め自信を持つと共に、自分の価値に誇りを持ち前向きに行動していきましょう!

【※セルフ・エスティームの意味を、傲慢、慢心、或いは誇張された自負心などと否定的に解釈されることがありますが、これは本来の意味とは違います。】

セルフ・エスティームへの想い

日本人とセルフ・エスティーム ~子供から大人まで、その課題を紐解く~ - 堀井 紀壬子

私は2003年にNPO GEWELを仲間たちと立ち上げてから、日本社会や日本企業が活力を取り戻すために、「個人個人の価値観や能力が尊重され、一人一人がイキイキと活躍できる社会」をめざして、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を進めてきました。日本企業では、ダイバーシティ&インクルージョンの課題で最優先課題は「女性の活躍推進」であり、私も数多くの企業で「女性社員のリーダーシップ開発」を課題に意識調査や研修を行ってきました。経済社会環境の急激な変化の中、企業の女性に対する期待も高まり、女性が働き続け、企業の中で意思決定にかかわる機会も増えています。男女の差を超えて、個人の能力や将来性が認められる時代にやっと近づいてきたと感じています。

しかし一方、女性たちのなかには、期待を受けながらも自分の能力に自信を持てないという方が多いのも事実です。いままで、長い間企業組織で「期待をかけられてこなかった」多くの女性たちが一朝一夕に企業内で責任あるポジションにつきたいと思わないことも理解できます。ただ、このままでは日本社会も日本企業も変わりません。そこで、私は女性たちのセルフ・エスティームを高める要素を入れた「自分ブランドづくり」というワークショップを行い、少しでも多くの女性たちが自分の可能性に気づいてもらうようにしてきました。その結果、自分が企業で貢献できる能力を持っていると自覚した女性が出てきました。健全なセルフ・エスティームを持つことの大切さを実感したのです。
そこで、私の人生の次のフェーズを、「日本人とセルフ・エスティーム」の研究に費やしたいと思うようになりました。

もう一つセルフ・エスティームとのかかわりで私が気になっているのが、将来を担うこどもたちの問題です。日本人のこどもたちは他の国のこどもと比較して、「自尊感情=セルフ・エスティーム」が低いといわれます。なぜなのか?これは将来の日本のリーダーを輩出するために課題となるのか?そのような問題意識にも何らかの回答を得られるような調査も行っていきたいと思っています。
究極的には「日本人のリーダーシップとセルフ・エスティーム」を巡る様々な課題になんらかの方向性を見つけ、日本社会の活性化にささやかでも貢献していきたいと思います。

人間関係の構築と行動力 ~自己効力感の向上が人を創る~ - 小西 ひとみ

キャリアカウンセリングに関わる仕事を通して、大学生、社会人の多くとかかわってきました。大学でキャリア形成の授業を教えていた中で、学生たちの能力には、 人間関係の構築力の不足や課題に対する行動力の無さがあると感じました。その原因を、限られた人間関係や自分から行動しない、自分の考えを他者と議論しないなど、新たなことへの行動が主体的になされないことによると考えました。指示されれば形だけはやるが、自主的には行われない。自分に自信が持てない、セルフ・エスティームの低さがそうさせているといえます。
私は授業の中で、彼らに対して意図的に人間関係の構築と主体的行動が促進されるように関わっていき、その結果、彼らは自ら行動しコミュニケーションが取れる人材になっていくことができました。どのようにかかわっていったかといえば、彼らの自尊感情を尊重し信頼関係を築いたうえで、未知の人と話すことや、課題解決 などを学生同士で議論し結論を導き出していくワークを行いました。
彼ら自身が行動し自らの考えを主張することを通じて、彼らが自分の能力が向上したことを認識していけるような授業を行ったのです。その結果彼らは、自分自身の可能性に気づき、授業が生き生きと変化していきました。そして、自分自身への期待(自己成長)から、彼らは自分からさらに行動していくようになっていくのです。このような経験からセルフ・エスティームは、行動の変容によっても高まることが実証できたと思っています。

自ら行動しようとするためには、その行動ができそうだと自分自身が判断すること、つまり自己効力感があった時に、実際に行動に移ることになります。バンデューラ(1977)が提唱した自己効力理論によると、自己効力は行動に直接的に影響を与えると仮定されています。
自己効力感とは、ある課題に必要な行動を成功裏に行う能力の自己評価をいいます。できるかどうかの自己評価であり、できそうと思うかどうかをいいます。
自己効力感が高ければ、その課題達成に向けて頻繁に働きかけ良い結果にもつながり、逆に自己効力感が低ければ、課題への働きかけは避けるようになり結果レベルも下がることが予測されると考えられています。
この自己効力感を高くし行動に直接影響を与えていくことが良い結果につながり、その経験がセルフ・エスティーム(自尊感情)に対しても良い影響を与えることになると考えています。
私の最終目的は、セルフ・エスティームの向上にありますが、その方法として、自己効力感に焦点を絞って取り組んでいきたいと考えています。

セルフ・エスティーム概念の普及~  グローバルリーダー/リーダーシップの育成で”新しい日本”作りを~ - 宇田川 信雄

32年間にわたる外資系企業での勤務では、労働組合の執行委員、米国の大学での研修や英国での勤務、海外本社や他市場との複雑なコミュニケーション、そしてM&Aプロセス管理の実際など、多くのことを経験してきました。異文化環境での組織やビジネス管理に求められるリーダーシップの在り方や、その底辺に流れるダイバーシティ&インクルージョンマネジメントの必然性と大切さを肌で経験し、そこで得られた知見を広く伝えていく機会としてNPO法人GEWELに参画し、理事として4年間の活動をしてきました。そして、GEWELでの“ダイバーシティ&インクルージョン推進活動”を通じて社会や企業を俯瞰してきた経験は、日本における新しい時代のリーダーシップマインド醸造と優秀な人材(リーダー)育成の大切さを痛感すると共に、適切で効果的なリーダーシップを発揮するうえで欠かすことのできないセルフ・エスティーム概念を普及させる重要性を感じました。

以前勤めていた会社を去る時に自分自身のセルフ・エスティームを大きく下げた経験があります。それまで自分の強みとしてきた事がことごとく否定されるような出来事が連続し、本来の自分を失い、何をしても前に進めないような自分がいました。そんな時に出会ったのが、セルフ・エスティームを高めるためのワークショップでした。そこで発見した新たなセルフコンセプトを基に適切なセルフ・エスティームを取り戻せたと思います。

今回RISEに参画した目的は、自分自身の経験を生かし、厳しい社会環境の中で自信やゴールを見失いつつある多くの人達に少しでも元気になって貰える機会を提供することですが、私が掲げる研究テーマは、「日本社会における次世代のリーダーとリーダーシップマインド育成に深くかかわる、日本人のセルフ・エスティームの実際」です。人口減少による内需停滞危機と云う大きな課題を抱えつつ、持続可能な成長を模索しなければいけません。この成長を可能にする人材(グローバル・リーダー/リーダーシップ)の育成にかかわるセルフ・エスティームの学術的研究をとおして、“新しい日本”作りに寄与できれば嬉しいと考えています。